新卒採用計画づくり
新卒採用総括"20卒"学生動向と"21卒"への対応
新卒採用総括"20卒"学生動向と
"21卒"への対応
“20卒”新卒採用は「19卒に比べ更に厳しくなった」と実感している企業様が多いのではないでしょうか。今回は、就職みらい研究所(リクルート)が発行する「就職プロセス調査」「就職白書2019」「ワークス求人倍率調査」からマーケットの変化を新卒採用総括として整理しました。”21卒”採用はもちろん、通年採用元年となる”22卒”採用を視野に入れながら、”新卒採用計画”を考える参考になればと思います。

求人倍率
20卒:1.83倍
新卒採用市場の難易度を見る指標として代表的な大卒求人倍率(株式会社リクルート ワークス研究所発表)によれば、2020年3月卒は「1.83倍」となっています。前年の「1.88倍」より0.05ポイント低下。8年ぶりの低下ではありますが、2010年以降では2番目の高さで相変わらず企業にとって厳しい環境と言えます。
従業員規模別"求人倍率"の推移

第36回ワークス大卒求人倍率調査
業種別"求人倍率"の推移

第36回ワークス大卒求人倍率調査
求人倍率は、従業員数の規模、業種によって差が大きいのが特徴です。従業員規模別では、「300人未満」が8.62倍と前年よりは低下していますが非常に高い数字になっています。業種別では「建設業」「流通業」が高い求人倍率となっており採用環境が厳しい状況と言えます。
"就職活動率"と"内定率"の推移
就職活動率の推移

就職みらい研究所 内定率調査査
就職活動実施率データによれば、就職活動のピーク時は、これまで3年生の3月でしたが、19卒・20卒ではわずかながら2月に移っています。その要因は、インターンシップの増加と理系採用の早期化が進んでいる点が注目すべきポイントです。また3月以降の就職活動率は急速に下がっており、就職活動を終了する学生が増加しています。
内定率の推移


就職みらい研究所 内定率調査査
内定率については、大学院理系の内定率が2月1日段階で10.5%となっており、前年同時期比で2倍以上(19卒:4.9%)の大きな伸びになっています。データには記載していませんが、4大でも理系学生への内定率の伸びが高く、早期から選考・内定付与が行われていることを示しています。こうした理系学生への早期内定付与が増加してことが、就職活動を早期で終了している大きな要因になっています。
インターンシップ
19卒学生の55.9%がインターンシップに参加

就職白書2019
インターンシップの参加状況は18卒と19卒では同水準となっており、20卒においては60~65%程度と予測できます。すべての学生が早期からインターンシップに参加しているようなイメージを持っている採用担当者の型も多いですが、実際には6割程度で、参加しない学生群も4割弱いるということです。
インターンシップ参加学生の平均参加社数は、19卒で4.69社になっていますが、参加社数を1社と回答した割合が26.7%存在しており、複数のインターンシップに参加する積極層とそうではない層に分かれています。
学生の属性別参加率
- 理系大学院生:63.5%
- 理系学生:59.9%
- 文系大学生:53.3%
- 文系大学院生:29.0%
男女別別参加率
- 女性:61.8%
- 男性:51.2%
学生の属性別では、理系大学院生の参加率が高く、理系採用の早期化の要因でもあります。男女別では、女性の参加率が男性の参加率よりも10ポイントほど高いのが特徴になっています。
エントリー活動
3月に企業へのエントリーを行う学生が激減し活動率は44.8%に低下

就職みらい研究所発行の就職プロセス調査
採用担当者の皆さんが厳しさを感じる象徴的な変化がこのエントリー数の減少ではないでしょうか。学生から企業へのエントリー数はこの数年減少していますが、2020年卒3月の活動ではエントリーを行ったと回答した割合が、5割を大きく割り込み44.8%(19卒3月:76.2% ▲31.4ポイント)まで低下しています。
3月にエントリーする学生ののべ人数は3年前と比べて半減

リクルートワークス研究所発行の求人倍率データに記載している「民間企業就職規希望者数」をベースに、就職みらい研究所発行の就職プロセス調査2020・2019・2018の「就職活動率」と「企業にエントリー(資料・情報の請求)をした_平均社数」データからのべエントリー推計値を算出
独自集計による「のべ総エントリー数」を見ると、3月にエントリーを行った総数は約400万エントリーとなり、昨年同時期比で▲35.5%となっています。17年卒では869万人いましたので、わずか3年で半数以下まで減少したことになります。
しかし、インターンシップ期間中(3年生の6月~2月)にエントリーを受け付けている企業が増加していますのでこの期間のエントリー人数を加えることが重要です。実際にいくつかの企業に聞いてみると、2月以前のエントリー数と3月以降のエントリー数を比較すると、採用力が高い企業群では、3:7~4:6程度、採用力が低い企業群では、1:9~2:8となっており、インターンシップ期間を加えてもエントリー数全体の減少傾向は変わりませんが、企業の採用力によってその差が大きく開く結果になっています。
一方で注目すべきポイントは、一人当たりのエントリー社数が増加している点です。ここ数年、エントリー率と一人当たりのエントリー社数は同時に下がっていましたが、20卒では3月、4月、5月共に一人当たりのエントリー社数は前年を上回る社数になっています。3月からエントリー活動を行う学生は減っていますが、活動を行う学生のエントリー活動は積極的に行われていることになります。
2月までに企業研究を終え応募・選考活動に入っている学生群と、3月から企業研究を行う学生群に分かれていることが考えられます。
会社説明会
3月に対面型個別会社説明会に参加した学生は44.4%と大幅減少

就職みらい研究所発行の就職プロセス調査
対面型の個別会社説明会を開催してもなかなか学生が参加しないとお困りの方も多いと思いますが、エントリーの傾向と同様に、会社説明会への参加率も、減少しています。19卒では63.2%の学生が3月に会社説明会へ参加していましたが、20卒では44.4%まで大幅に低下しています。
3月ののべ個別会社説明会参加人数は▲26.3%

リクルートワークス研究所発行の求人倍率データに記載している「民間企業就職規希望者数」をベースに、就職みらい研究所発行の就職プロセス調査2020・2019・2018の「就職活動率」と「個別企業説明会・セミナーのうち対面で開催されるものに参加した_平均回数」データからのべ対面型個別会社説明会参加人数の推計値を算出
独自集計による「のべ対面型個別会社説明会参加人数」を見ると、3月に参加した総数は約154万人となり、昨年同時期比で▲26.3%となり約50万人減少したことになります。4月・5月も同様に大きく減少しています
一方、一人当たりの平均参加社数は増加しています。このデータからも2月までに企業研究を終え応募・選考活動に入っている学生群と、3月から企業研究を行う学生群に分かれていることを裏付ける結果になっています。
web会社説明会の活動
3月のWEB型説明会参加率は前年比+7.3ポイント

就職みらい研究所発行の就職プロセス調査
3月のWEB型個別会社説明会は、参加率・平均参加社数共に増加しています。参加率は36.2%となり、3人に1人が利用しています。また、平均参加社数も前年比+1.29社の3.43社となり、学生にとて身近なツールになっています。
3月WEB型説明会参加人数前年比+103.5%の大幅増

リクルートワークス研究所発行の求人倍率データに記載している「民間企業就職規希望者数」をベースに、就職みらい研究所発行の就職プロセス調査2020・2019・2018の「就職活動率」と「個別企業説明会・セミナーのうちWEBで開催されるものに参加した_平均回数」データからのべWEB型個別会社説明会参加人数の推計値を算出
独自集計による「のべWEB型個別会社説明会参加人数」を見ると、3月に参加した総数は約51万人となり、昨年同時期比で+103.5%の大幅増になっています。
対面型とWEB型の個別会社説明会ののべ参加人数を合計すると約200万人となり、対面型150万人、WEB型50万人になりますので、個別会社説明会の4回に1回はWEB説明会になっている計算です。
ESなど応募書類に提出の活動
67%の学生が3月にESなど応募書類を提出

就職みらい研究所発行の就職プロセス調査
3月の応募書類提出率は67.4%で前年比では若干の減少となりました。一人当たりの提出社数は7.14社となり前年比+1.31社となりプラスになっています。4月、5月も同様の傾向で、提出率は若干下がり、一人当たりの提出社数は増加になっています。
グラフには記載していませんが、2月の提出率が36.3%(前年:29.4%)となっており、2月以前に提出している学生が増加していることが提出率低下の要因と考えられます。
ESなどの応募書類提出のピークは3月

リクルートワークス研究所発行の求人倍率データに記載している「民間企業就職規希望者数」をベースに、就職みらい研究所発行の就職プロセス調査2020・2019・2018の「就職活動率」と「エントリーシートなどの書類を提出した_平均社数」データからのべESなどの書類提出数の推計値を算出
独自集計による「のべESなどの書類提出数」を見ると、3月に提出した数は約199万人(前年比+19.5%)、4月に提出した数は197万人(前年比+13.5%)となり、ESなどの書類提出時期が3月に移行している傾向です。
2月までに企業研究を終えた学生群は、3月にESなどの応募書類の提出を行っており、3月からエントリーや会社研究を始めた学生群は4月にESなどの応募書類を提出している2段階の構造が見えてきます。
面接などの選考活動
一人当たり面接社数が増加

就職みらい研究所発行の就職プロセス調査
面接などの対面選考を受けている割合は前年比で若干減少傾向にあります。グラフには記載していませんが、2月が26.3%(前年:26.5%)となっており、2月以前から選考を受けている学生が増加しており、就職活動終了者が増加していることが予測できます。
一方、一人当たりの選考受験者社数は増加しており、学生が面接へ積極的に参加していることと同時に、企業側の面接選考人数の定員枠を増やしたことが予測されます。
面接のピークは4月

リクルートワークス研究所発行の求人倍率データに記載している「民間企業就職規希望者数」をベースに、就職みらい研究所発行の就職プロセス調査2020・2019・2018の「就職活動率」と「面接など対面での専攻を受けた_平均社数」データからのべ対面選考社数の推計値を算出
独自集計による「のべ面接などの対面選考を受けた社数」を見るとグラフのすべての期間で前年比増加になっています。内定率の推移をみると、4月1日~5月1日の1カ月間に約30ポイント増加していますので、4月前半から後半までたくさんの対面選考を行いながら大量の内定を付与したことが予測できます。
3月の学生の行動が大きく変わった
3月の主力行動はエントリー活動からES提出へ

就職みらい研究所発行の就職プロセス調査
「エントリー」、「個別会社説明会対面型」、「ES等書類提出」、「面接など対面選考」の4つの実施率を月別・前年比で比較すると第1位は、67.4%:ES等書類提出。前年よりは下がっていますが、唯一50%を超える実施率になっています。第二位は、49.2%:面接など対面選考となっています。
3月からの採用活動では間に合わない、通年採用への助走がスタート
一部の企業では本格的な採用活動を3月からとお考えの方も一部いらっしゃいますが、20卒データを見る限りでは、間に合わない状況になっています。インターンシップからの採用スケジュールを見直し、遅くとも3月には応募締切を設定する活動が必要になります。
21卒新卒採用活動の計画づくり
インターン参加学生への対応とオリンピックを考慮した採用スケジュール
21卒採用では、インターンシップ期間から、会社説明会やESなどの応募受付・選考・内定付与といった、通年採用に向けた対応が必要になります。一方で、夏や秋の早期インターンシップへ参加した学生の場合、業界研究や企業研究は積極的ですが、志望企業の絞り込みについては個人差が大きく、応募受付をどの時期から設定するかが採用担当者にとって悩みのポイントになります。また、21卒採用では、東京オリンピック開催による影響を考慮することが重要です。オリンピック開催時期(2020年7月24日から8月9日までの17日間)の混乱を避ける狙いで企業側の動きが早まることは間違いありません。考え方としては3つのグループへの対応を行う考え方をご提案しています。
就活生を3つのグループで考える

インターンシップに参加している学生は20卒で約60%と推定しています。(但し、理系学生に限定すると65%を超えていると考えられます。)19卒学生のデータによれば、インターンシップに参加した学生の就職先を見ると、インターン参加企業に就職した学生は全体の22.4%。インターンに参加した企業と同業に入社した学生は14.8%。全く異なる業種に就職した学生は22.8%となります。
このことから学生を大きく3つに分類して採用スケジュールを検討することをおすすめしています。
Group1 インターンシップ期間中に志望企業を決定し早期応募を行う学生群
Group2 インターンシップ期間中に業界を決めて早期応募を行う学生群
Group3 3月から本格的に業界研究・企業研究を始める学生群
21卒向けグループ別スケジュール案
Group
Group1
Group2
Group3
応募受付開始時期
12月
2月
3月
面接選考開始時期
1月
3月
4月
内定付与開始時期
2月
3月
4月
Group1
応募受付:12月
面接選考:1月
内定付与:2月
Group2
応募受付:2月
面接選考:3月
内定付与:3月
Group3
応募受付:3月
面接選考:4月
内定付与:4月
応募受付を12月から開始し、順次応募締切を設定していきます。応募受付後は選考活動を行い、最初のグループは2月から内定付与のスケジュールにされることをおすすめしています。
21卒新卒採用プロセスの基本
web説明会の活用がポイント
鍵になるのは「WEB会社説明会」です。20卒採用でも利用者が増加しているWEB説明会を事前に準備し、エントリー者全員が視聴可能な状態にするのが大きなポイントです。
インターンシップ開催時期によっても多少変わりますが、インターン参加後の情報提供という観点で大きな力を発揮します。また、インターンシップ期間にインターンシップに参加しなくても、エントリーした学生に対しても会社情報を提供できますので早期から会社理解を深めてもらうことができます。

エントリー者は自由に情報取得を選択できるようにする
インターンシップ期間からエントリー者に対して自由に情報を取捨選択できるように提供します。情報内容は以下の3つが代表的なコンテンツです。
- インターンシップ(事前予約)
- WEB会社説明会 自由に視聴可能
- 対面型の会社説明会などのイベント(事前予約)
就職サイトを利用の場合、対面型の会社説明会は事前予約の影響で3月以降の開催になりますが、選択できるようま設定することが重要です。また、希望者は全員が応募ができるルールにするのも重要です。応募受付開始日を12月~設定し、早期から受け付ける体制を整えます。
応募者を増やすための仕掛け
応募者を増やすためには2つの仕掛けが重要になります。
- インターンシップ期間のエントリー者・参加者を増やす仕掛け
- エントリー者の動機づけを強化する仕掛け
データを中心に見てきましたが、20卒採用の学生の動きは、この10年の変化の中でも非常に大きな変化になっています。こうした変化の中身をご理解しただき、21年卒、更には通年採用が本格化する22年卒採用に向けてのご準備にお役立てください。