新卒採用計画立案の基本

今さら聞きにくい新卒採用計画づくりのポイント

新卒採用を初めてご担当する皆さんが意外とお困りになるのが「新卒採用計画づくり」ではないでしょうか。どんな人材を何人採用するのかというのはある程度決まると思いますが、そのために何が必要になるのかを整理するとなるとなかなか前に進まないこともあります。今回は、こうしたお困事に対応するためのベーシックな考え方についてまとめています。

STEP1 新卒採用環境の把握

景気の変動や採用ルールの変更が大きな要素です。求人倍率の数字や内定率の推移の変化などが重要な指標です。そしてこの環境変化が自社の採用にとってプラスなのか、それともマイナスなのかを考えることが大切です。マイナスであるならば、前年とは異なる取り組みや対策が必要になり予算などを増やすことも必要です。

STEP2 採用目標の設定

採用目標は採用人数と採用の質(人材)の掛け算で決まります。特に質についてしっかりと議論し決定することが重要です。例えば、学部学科不問で採用を行う場合と、工学部電気系専攻学生に限定して採用を行う場合では質が異なり、難易度は大きく違います。自社が求める人材の質をしっかりと決めることがスタートだと言えます。

STEP3 採用力の見直し

採用力とは「採用力=企業力×労働条件処遇×採用活動」です。現時点の自社の採用力がどの程度なのかを冷静に判断して、採用環境の変化、採用目標とのバランスの中で改善・見直しを行います。企業力や労働条件は短期間で改善できない要素ですので、採用活動をどのようにするかが重要なポイントになります。

採用目標の設定

どのような人材を何名採用するかという企業側が設定する目標

採用目標は、“人材の質”と“量”(人数)に分解することができ、“人材の質”は、スペックとタイプに分けて考えることができます。スペックとタイプについての違いは下記を参照してください。

スペック
定量的に違いを判断できる事柄

新卒採用者のスペック項目は、学歴(博士・修士・学部)、専攻(電気・機械・情報・経済・文学・・・・etc)、選考試験の結果などが主なものになります。(※社会人採用の場合は、職種経験や業界経験の有無や担った期間、資格などもスペック項目になります。)

タイプ
定性的な事柄

タイプ項目は、志向や価値観と能力に関することが中心になりますので、抽象的な表現になることが多くなります。例えば、「コミュニケーション力」「論理的な思考力」「大胆な発想力」など、様々な言葉で表現することができます。

採用力

自社の「採用力」はどの程度あるのか?

「採用力」という言葉は、採用に関わるみなさんであれば一度は耳にしたことはあると思います。しかし、自社の「採用力」はどの程度あるのかを考えたことはあるでしょうか。このことを考え始めると、意外とまとめることが難しいことに気づきます。そこで、まずは「採用力」について詳しく説明をしていきます。

「採用力」は、『企業力』、『労働条件待遇』、『採用活動』の3つに分類

採用力=企業力×労働条件処遇×採用活動

企業力

企業規模やブランドイメージ、属している業界や扱っている商品・サービスなどが含まれます

企業概要歴史の長さ、資本金、売上高、従業員一人当たりの生産性、従業員数、グループ会社数、資本力、資産内容、収益力、経常利益、市場占有率、申告所得、ランキング、無借金経営、上場/非上場、株主ほか
認知度・イメージ自社の属する業種/業界/業態イメージ、将来性、安定性、社会貢献度、文化活動、地域密着度、国際性、ベンチャー性、CMイメージ、多角化、将来戦略、技術力、経営理念、経営者の人柄・知名度、有名な社員ほか
商品・サービス(関連するもの)商品・サービスそのもの、販売力、新製品開発力、技術力、特許数、基礎研究への注力、研究所数や設備、工場数、研究員/技術者の陣容ほか

労働条件処遇

募集要項に関する内容。最近は勤務地域限定制度を導入し強化する企業が増加。

職場環境仕事内容、自由度、職場活性度、勤務地、転勤の有無、勤務時間、離職率、社内結婚の傾向、教育研修、留学制度、有資格制度ほか
現在と将来の変化実力主義、昇進/昇格スピード、将来の年収、事業所の拡大、新規事業展開、自己申告制度、独立制度ほか
賃金と福利厚生給与、賞与、諸手当、報奨金制度、寮/社宅の有無、社員食堂の有無、社内融資制度、社内販売、福利厚生施設、健康増進施策、残業の量、休日休暇、有給休暇取得率、子育て支援ほか

採用活動

『採用活動』は、採用広報と採用実務の2つの項目に分解されます。採用広報とは、どのようなメッセージを、いつ、どんなツールで、どの程度伝えるかということです。そして、採用実務は言葉の通り、採用に関わるすべての実務行動を指しています

採用広報
広報コンセプト×広報時期×メディア×露出量
採用実務
いつ広報時期、学生がインターンシップエントリー時、インターン参加時、本エントリー時、セミナー/会社説明会、会社訪問、面接、選考試験、内定付与、内定後、内定式まで・・
誰が社長が、役員が、トップ営業が、若手社員が、人事部長が、人事スタッフが、全社員が・・
何を理念を、事業戦略を、ポリシーを、仕事内容を、1日のスケジュールを、期待を、未来計画を・・
どのように熱く、クールに、集中して、継続して、正直に・・

このように考えると、自社の「採用力」はどの程度あるのか、少しはイメージしやすくなったのではないでしょうか。

『採用活動』の工夫で、『企業力』が強い競合が相手でも勝つことが可能

採用活動を成功させるためには、「採用力」を強くすることがポイントになります。そのためには、この3つの要素を同時に強くすることができれば一番良い状態を実現できます。しかし、採用を行っている期間内で「強化できる事」と、「強化できない事」が実際にはありますので、そこを分けて考えることが必要になってきます。

『企業力』を短期的に強化しようと考えても、なかなかうまくはいかないもの

例えば、従業員数をいきなり5倍にしようとしてもそう簡単な話ではありません。また、ブランドイメージを変えようとしても短期的には限界があるでしょう。『企業力』の強化は、中長期の視点で取組んでいくことが大切になります。このように、強化しようと考えると時間のかかる『企業力』ですが、弱まる時は一瞬です。企業が不祥事を起こした場合などが代表的なケースになります。これまで大切に、長い時間をかけて創り上げた「企業力」が、見るも無残になるケースもあるのです。

『労働条件待遇』は、どちらかと言えば中小企業にとっては強化しやすい要素

例えば、給与体系や休日休暇などの人事制度を改定する場合、小さな組織であれば、経営者の判断でスピーディーに変更することもできるはずです。一方で、大きな組織の場合は、経営者が意思決定を下した場合でも、運用に至るまでには、相当な時間を要するものです。関係する部署や組織の調整を行い、運用開始に至るまでには、どんなに早くても2年程度の期間が必要となります。

近年、希望勤務地への配属を確約する制度を設ける企業が急増しています。勤務地へのこだわりが強い学生への配力ですがこうした制度も採用力をあげるポイントになります。

『採用活動』は、人事採用担当者の中で最も自由度が高く、企画設計できる領域

そして、実際に行動したことが、結果にダイレクトに反応する分野でもあります。例えば、採用競合の企業と比較して、学生との対応時間を増やし、コミュニケーションを深めることができれば、例年よりも内定辞退を抑制できる可能性が高まります。また、採用広報のコンセプトを新しくすることで、採用広告は変わり、反応する学生の質も変化していきます。このように、「採用力」を強くするためには、『採用活動』においての創意工夫が重要になり、この努力次第では、自社と比較して『企業力』が非常にある採用競合にも、勝つことは十分に可能なのです。

最後に採用計画を検証しましょう

「採用環境」の変化はある程度仮説を立てながらになりますが、「採用目標」の設定と「採用力」の強化については、自社内で議論を重ねるテーマになります。そして良い採用計画をまとめるためには、バランスを考えることが重要になります。採用計画がまとまった段階で、ぜひ内容を検証してみてください。「採用力」の要である「採用活動」の詳細をすべて実行した場合、「採用目標」を達成することができるかどうかという点が検証ポイントになります。達成するイメージが十分にもてれば、良い新卒採用計画ができた証です。