求める人物像
"求める人物像"の言語化
採用計画を考える時期に検討されるのが自社の”求める人物像”ではないでしょうか。新卒採用活動のあらゆる基準になる求める人物像の言語化についてまとめています。
採用目標
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採用の質
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採用の量
(人数)
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採用スペック
学歴・専攻・専門・能力
×
求める人物像のタイプ
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採用基準

"求める人物像"に関するお悩み
前年の"求める人物像"の設定のままで果たしてよいのだろうか
一応言語化はしているが、この内容で続けてよいのだろうか
なんとなく社内で共有されている程度で、言葉にできなくて困っている
“求める人物像”は一度作成したら終わりではありません。自社の事業の進捗状況や新規事業の取り組みなど、事業構造が頻繁に変化する中では、常に求める人物像を見直すことが重要になります。実際の採用活動では、選考基準として利用する重要な判断軸ですので、慎重に見直しを行います。
求める人物像を言語化するために様々な有料パッケージ商品もいろいろあります
- 社員のコンピテンシーから抽出から描く考え方
- 選考時に利用する適性試験の項目を利用して整理する考え方
- 既存の人事考課の中にある評価項目を活用する考え方
"求める人物像"を描く基準は自社の事業戦略
今後事業戦略を強化するためには、どのような人材が最適なのか
自社の事業戦略を基準に、今後事業戦略を強化するためには、どのような人材が最適なのかを考えていくことです。今回の考え方は、自社の事業戦略を基準に考えていきます。企業それぞれ、事業戦略の内容は異なります。この違いを実現・強化するためには、どのような人材が最適なのかを考えていくことで、求める人物像を言葉にしていくという流れになります。
事業戦略という言葉が出てくると、とても難しいイメージをお持ちになるかもしれません。確かに奥の深いテーマではありますが、今回は考え方をシンプルにして進めていきますのでご安心ください。下記の5つのステップに沿って、16個の質問に答えていくことで、求める人物像の言葉が浮かび上がってきます。
1.自社の事業戦略を明確にする
Q2 どんな顧客を相手に仕事をしているか?
Q3 どんな企業と競争(競合)しているか?
Q4 競争相手の企業と競合した場合、何を強みにして勝つのか? 何を強みとして勝ちたいのか?
事業戦略をシンプルに考えると、問いはこの4つになります。特に大切になるのが、Q4です。この部分をどのような言葉で整理できるかがとても重要になってきます。Q4を別の表現にしますと、顧客は、その商品・サービスを購入するにあたって、自社から購入するのが良いのか、または競合から購入するのが良いかを悩んだと仮定します。この時、顧客が自社を選んでくれる理由を考えるということになります。顧客の言葉でイメージを膨らますと、言語化がスムーズに進みます。最初から正解を探すというよりは、思いつく言葉を箇条書きで出してから、全体を俯瞰して整理していくことで、納得感の高い言葉になります。
2.自社の従業員の働き方を明確にする
Q4で出た内容を実現・強化するために各部署の従業員が、日々行っている工夫や組織として決めているルールなどを言葉にしていきます。
3.将来の事業戦略と働き方の変化を確認する
Q7 求める人物像は、どんな知識を持つ人か? 将来どんなことを目指している人か?
Q1~Q5の内容を3年後、5年後の時間軸で考えた場合、それぞれどのような変化が起きるかを考えていきます。Q7で出てきた内容が、求める人物像を言葉にすることになります。しかし、この時点ではまだ抽象度が高いので、更に次のステップで、モチベーションを明確にすることで、より人物像の姿がイメージしやすくなります。
4.社員のモチベーションリソース
Q9 職場環境はどんな状況か?
Q10 社員はどんなライフスタイルを送っているか?
Q11 求める人物像は、どんなことに喜怒哀楽を感じる人であってほしいか?
Q8~Q11の内容を俯瞰してみてください。こうすることで、モチベーションの特徴がみえてきます。
モチベーションの主な種類
B:職場の雰囲気や仲間との関係に対してモチベーションが高い
C:組織の中での立場やポジション、昇進・昇格などに対してモチベーションが高い
D:生活スタイルを大切にして、趣味や休日に対してモチベーションが高い
上記のA~Dは、通常すべて存在しますが、企業によってその割合の違いに特徴が出てきます。
例えば、 「当社はAのモチベーションが70%程度で、残りはBが強い企業である」 「当社はCのモチベーションが50%程度で、Aが30%、Dが20%程度の企業である」 このような特徴をつかむことができます。
"求める人物像"を「スペック」「タイプ」に分ける
上記のステップを終え、求める人物像の言語化がある程度出来上がったら、次は「スペック」「タイプ」で整理することを推奨します。
この時、「スペック」は定量化項目として(新卒の場合、学校種類、学部、学科、資格、能力などがスペック項目)分類。定性的な内容はすべて「タイプ」に分けて整理すると、実際の採用実務シーンで利用しやすくなります。「コミュニケーションが好きな人」というのもタイプですが、この書き方ですと曖昧で選考場面では利用しにくくなります。コミュニケーション力の中身を細分化して、どのような中身が求める人物に必要かを整理します。
コミュニケーションのある人の例
- 「初めての相手とでも仲良くなるコミュニケーションができる人」
- 「物事について交渉するコミュニケーションができる人」
- 「お客様の意見やクレームをしっかりと聞きながらコミュニケーションが実践できる人」
- 「上司へもYES・NOをはっきり言え、論理的に説明することができる」
このように「コミュニケーション」という言葉を使っても様々なタイプに分けることができますので、自社が求める「コミュニケーション」とはどのような内容なのかを具体的な言葉にすることが大切です。
"求める人物像"を言語化する議論の過程を記録する
今回の議論に参加していないメンバーが面接官などの選考を担当する場合、選考基準でもある「求める人物像」について詳しく共有する必要が出てきます。この場合、出来上がった「求める人物像」の言葉だけを共有しても、意図はなかなかうまく伝わらないものです。そこで、議論の時に出た考え方や背景についても伝えることで、共有がスムーズに進みますので、しっかりと記録を取っておくことをが重要です。
このように、「求める人物像」を言語化することは容易なことではなく、時間を要することかもしれません。しかし、ここが曖昧のままだと採用活動はうまく進みません。なぜならば、募集広告の内容や説明会のコンテンツ、面接の方法など、採用活動実務にはすべて「求める人物像」が繋がっているからです。言い換えれば、繋がっていないと良い採用活動はできないとも言えます。次年度の採用活動を検討されるこの時期に、一度自社の「求める人物像」について議論されてみてはいかがでしょうか。そして、言語化したものを社内で共有することから始めてみませんか。